『動詞07.さす』


雨が降ると思い出す…

濡れるのも構わなかったアノ頃
通り過ぎる冷たい夜風が
荒んだ心に拍車をかける

言葉を知ろうと思ったアノ日
小さなやさしさに触れたアノ日

初めて心から感謝することを知った
初めて人の温かさに触れた気がした


雨が降ると思い出す…

やさしく傘を差し出してくれたアノ人
手元に残る黒い男物の傘が
冷たい雨の中の唯一のぬくもりになる

言葉を知らなかったアノ頃
人のやさしさを知らなかったアノ頃

お礼も言えずに去ってしまった
名前も聞かずに別れてしまった

残るのは黒い男物の傘と
やさしい笑顔とアノ人のぬくもりだけ……


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