『動詞09.ふれる』


悴む手にそっと息を吹きかける

吐息は一瞬だけ手に残り
その後は冷たさだけが残る

失ったぬくもりが戻ることはなく
焦燥感の残る心が
寒さによってさらに冷たさを増していく

触れるほど近くにある優しさが
新たなぬくもりになるのはいつのことだろうか…

触れられぬほど遠くにいってしまった優しさが
思い出になるのはいつのことだろうか…

澄み切った夜空を見上げ
新たな吐息を吹きかける

まだ見ぬ春の訪れに思いを馳せ
今はただ一身に夜風を浴び続ける……


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